木橋が選択される理由
地球温暖化と木橋
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近代木橋の課題と今後の展望

  わが国において歴史の浅い近代木橋は、解決しなければならない幾つかの問題点を抱えています。その課題を克服すべき、産学官の取り組みが始まっています。
 近代木橋の問題点・課題は、木橋が木材で構成される材質的な面からくる耐久性、安全性への疑問を基本として、設計方法、維持管理方法、積算方法が確立していないことにあります。しかし、そこには、近代木橋が技術的に克服した問題もあり、諸外国では解決されている課題もあります。またわが国においても解決へ向けた取り組みもあります。そこで、問題点・課題を整理して、多いに普及が期待される今後の展望もみてみましょう。
木材の持つ特性から派生する問題点  木橋は、その主要資材が自然の産物である木材です。木材は、個体差があり、欠陥として歪み、節、腐れなどがあります。また、木造構造物には、変形、摩耗、腐朽、虫害、火災で燃えるなどの可能性を抱えています。
 近代木橋で使用する工業化された構造用集成木材などでは、構成する材料の段階で歪みや節、腐れなど固有の木材が持つ欠陥を取り除き、一定強度の選別が行われます。したがって、製造された工業化木材は、均一な強度を持つ工業製品となり、木材固有の欠陥はこの段階で処理されています。木構造の問題点は、以下のような処理で解決を図っています。

<変形>
 木材の変形は、水分を多く含んだ木材が乾燥するにしたがって起こる現象ですが、これについては、十分な木材乾燥を実施することにより克服されています。とくに工業化木材では徹底した乾燥が行われており変形の問題は克服されているといえるでしょう。逆に、熱膨張率の低い木材は、鉄やコンクリートよりはるかに寸法安定性に優れています。

<磨耗>
 摩耗に関しては、消耗する部分を適切な時期に取り替えるより方法がありませんが、容易に交換できる設計の配慮を施し、経費を最小に抑えるようにすべきです。

<腐朽・虫害>
 腐朽、虫害に対しては、初期段階で適切な防腐・防虫処理を行った後、特に水分がたまりやすい部分の水はけ、雨水対策を設計施工上で行えば腐朽・虫害は技術的に克服できる問題です。

<火災>
 木材は、摂氏260度以上で燃える性質を持っています。しかし、大きな断面では表面に炭化層が形成され内部まで燃え尽きることはなく、構造を支える強度の低下は鉄よりもはるかに低く、構造物の崩壊は防がれるといわれています。
急がれる設計基準の確立  近代木橋が、わが国において本格的に建設されるようになってわずか15年程度しか経っていません。そのため近代木橋に対する公的な示方書がないのが現状です。木橋の設計示方書として公表されているのは、昭和15年に制定された「木道路橋設計示方書案」だけで、実質的には忘れられた存在となっています。そのため、実務に当たっては、(財)日本住宅・木材技術センターで編集された「林道における木橋設計施工の手引き」(平成7年)日本建築学会編の「木構造設計基準」(昭和48年)木質構造設計基準(平成7年)などの建築の基準や諸外国の規定などを用いて設計されています。

 近代木橋のニーズが高まっているところから、わが国における木橋の設計基準の確立が急ぎ望まれるところです。現在、国土交通省では、歩道橋以外の木橋を認めていませんが、その規制の緩和、わが国の事情に沿った基準の確立を日本木橋協会は要望しています。

耐久性と安全性の確保  木橋への疑問を持つ方の多くが、耐久性、安全性に言及されます。木材は、材質として鋼と同等以上の耐久性を持っています。世界最古の木造建築である法隆寺は、2000年の歴史があり、世界最古の木橋、スイス・ルッツエルンのカペル橋は、1333年に建設され、670年もその姿を湖に映し続け、岩国市の錦帯橋は、328年も前に建設されています。これらの木造構造物は、何度も手入れが行われたことは確かですが、木材の耐久性が極めて高いことを示しています。耐久性に関しては、いかに木材の腐朽防止を構造対策上に施すかにかかっているといっても過言ではありません。また、適切なメンテナンスの継続が重要です。
 安全性に関しては、近代木橋は、一般道路橋と同等の曲げ剛性を保持しています。現在行われている設計計算法を採用し、良好なメンテナンスを前提とすれば安全性に問題はないといえます。今後、30年程度の経年実績と健全度評価に関する技術が整備されるにしたがってその評価が確立されるでしょう。
建設コスト低減への取り組み   残念ながら現時点では、「木橋は高い」といわれても仕方ありません。その主因は、主要部材の規格がないことから製造・製作費が高くなっていることにあるようです。今後、近代木橋の需要が拡大を促進し、部材の規格化、標準化設計、プレキャスト床板のような製作の省力化、施工時での省力化や標準化施工などの研究が進めば、経済性の追求も進むと考えられます。ちなみに米国、カナダでは、木橋が選択されるのは、コスト面でもっとも安いからといわれています。構造用集成材メーカー、橋梁建設会社を主体にコスト削減の努力が続けられており、やがて鋼橋やコンクリート橋と同程度のコストを実現できると考えられます。
施工技術・品質管理の向上  施工技術・品質管理に関しては、施工会社の技術に依存するところですが、近年、橋梁専門メーカー企業があいついで近代木橋の架橋に参入しているところから、鋼橋、コンクリート橋で培われた技術が導入されつつあります。車道橋の実績が増加するにしたがってその実績も積み上げられています。
メンテナンスの問題  木橋は、その維持管理によって寿命が違ってきます。錦帯橋が、江戸時代中期から使用に耐える構造を維持しているのは、綿密な維持管理が踏襲されているからです。健全度評価を含めたメンテナンスのあり方が、各地で検討され、実施されるようになっています。また、地域でのマニュアル化も進んでいます。近代木橋については、構造用集成木材のクリープ現象、動的荷重の作用など未知の部分が残されていますが、多くの研究機関が架設された木橋を対象に経年変化の研究が進められており、やがて統一された設計・施工・メンテナンスのマニュアルが作成されるものと期待されています。
ハイブリッド化で大スパン橋も可能に  近代木橋は、素晴らしい技術的可能性を秘めています。とくにわが国では、鉄やコンクリートとの複合木橋の技術開発が進められており、大スパンも含め今後大いなる発展が期待されています。現在の限定された架橋から飛躍して、欧米先進国のように一般的な歩道橋はもとより一般道の短・中スパン橋、高速道路の跨橋などに普及して行くものと考えられます。日本木橋協会では、さまざまな問題点の解決、課題に取り組み、近代木橋の普及に努力してまいります。